「ボルベール―帰郷―」★罪と罰と償いと

スピノザさんへの返信でお話した「ボルベール―帰郷―」
映画レビューでは、はっきりと触れなかったことがあるということと、
せっかくなので、ここにも挙げますね☆
(ネタバレです)
それは、“罪と罰と償い”ということです。
物語の大筋は、娘ライムンダと母の物語です。
死んだはずの母は、生きていました。
生きていたのに死んだことにしていた訳は、
人を殺したらからです。
夫と愛人を焼き殺し、愛人の死体を自分と思わせたのでした。
ストーリーは、ほとんど、ライムンダの家族の出来事を見せますが
ラストに、忘れてはならないシーンを持たせてくれました。
それは、殺した愛人の娘を、ライムンダの母が看病することです。
母親の死の真相を知らぬまま、病気で、死期の迫った娘アグスティナを
ライムンダの母は、最期まで看取る決心をするのです。
罪滅ぼしのため…..。
(もしかしたら、夫の子かもしれません。
そうならば、二人は、義理の母娘でもあるのです。
幾重にも、女たちの関係を編み上げる展開は、念が入ってます。)
ライムンダの母は、殺人の“罪”についての“罰”を受けてはいません。
しかし、時効はあっても、生きている限り、
“償い”はするべきです。
“償い”は、“罰”を受けるよりも、必要なものだと思います。
病めるアグスティナに必要なものは、母の敵への“懲罰”でなく、
安らかな死を迎えられることです。
ライムンダの母が、自分への“罰”を“償い”にし、
アグスティナを看取ろうと決心したシーンは、
私には、印象的なシーンとなりました。
ライムンダの母も、もし愛人などいなければ、
嫉妬に狂わず、人を殺す過ちを犯すこともなかったと思うと、
憐れな気もします。
人生を狂わされても、振り回されても、
それなりに、人は生きていかなければならない…………..。
生きるって大変なことだ、と思いますね。