映画『逢びき』★“別れ際”を覚えていますか?
作品について http://cinema.pia.co.jp/title/5203/
↑あらすじ・クレジットはこちらを参照してください。
以下ヤフーレビューの転記です。(ネタバレ表示です)
人妻ローラは、駅の喫茶店で、
偶然、目のゴミをとってもらった医師アレックと
恋に落ちた…。
平穏であることが幸せだ、と思っていた日々が一変し、
毎週木曜日に逢瀬を重ねる二人。
しかし、
それぞれの家族がいる二人には、分別が必要。
アレックは、アフリカに転勤することを決めた。
今日で、最後と言う日。
あと数分で列車がくる、という時。
駅の喫茶店で、二人で、別れを十分惜しみたい、
というとき、あるオバサンが、
ローラを見かけて、機関銃のように、喋りまくった。
発車時刻が近づいたアレックは、何も言わず、
ぎゅっとローラの肩をつかむと、
喫茶点を出て行って、それっきりとなる。
二人の“別れ際”は、台無しになってしまった……。
別れたくない人との“別れ際”を覚えていますか?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
学生の頃、彼ではない、1学年上の先輩がいました。
私たちは、毎週日曜日、共通の趣味を二人でしていましたが
彼が卒業するまでの半年ちょっとの付き合い、
というのが暗黙の了解でした。
そして、暗黙の了解のまま、
最後の日曜日が、来てしまいました。
あの時なぜ、私は、このまま別れるものと、
諦めていたのかは、わかりません。
なぜ、繋がる努力をしなかったのか、と聞かれても
答えられません。
わかっているのは、私たちは、最初から最後まで
“親しい友達”だった、ということ。
恋心を隠したまま、私が片思いをしていた、ということ。
先輩を、彼氏とは、呼べなかった、ということ。
私が、まだ子供だった、ということ…。
“その日”が近づくにつれ、
逢えなくなる哀しさは、先輩への想いに膨らんでいきました。
でも、自分は、先輩の彼女ではない、という気持ちが、
ブレーキをかけ続けていました。
だから、“その日”も、いつもと同じように、あるいは
いつも以上に、何でもないふりを、私はしようとしていました。
友達同士の楽しい時間を、無理にでも、作り出したかったのです。
しかし、別れが辛すぎる私は、込み上げてくる哀しみから、
ほとんど話すことが、出来ませんでした。
伝えたいのに伝えられない気持ちが、多ければ多いほど、
深ければ深いほど、言葉は、声にすらならないのです。
それでも、
時間が過ぎるたびに、別れのときが近づいてきます。
いつものように、車で送ってもらった車内では
「じゃあ、また、来週ね!」
の変わりの言葉ばかり、探していましたが
頭の中では、砂時計の砂の音だけが、聞こえてくるようでした。
ただ、ただ、どうしようもなく哀しくて…。
別れの言葉なんて、見つかるはずがない…。
気付けば
放心状態で手を振って、車を見送っていました。
先輩の最後の言葉も表情も、記憶に留められないまま…。
唯一、思い出されるのは、車から降りてバタン!と閉めたドアの音。
この音が、私の“結末”として
別れの“線引き”をしたのかもしれませんが…。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ローラとアレックの幕切れは、どうだろう。
二人とも、私と同様、言葉もなく、思い出の場所を散策したあと、
駅の喫茶店にいた。
もし、あのとき、
「アラ、アナタ!お茶を持って来て下さるゥ?」
と、愛する彼にお茶を運ばせるような、オバサンが来なければ、
ローラは、列車に乗ったアレックに、未練を引きずりながら、
ホームの端まで、泣きじゃくりながら走っていったことだろう。
人の恋路を邪魔するオバサンは、馬に蹴られてナンとやらだ(憤!)
とも思いながら
空気を無視したオバサンの登場があればこそ、
ローラには、泣き濡れた“別れ際”ではなく、
アレックの強い温もりだけを、ぎゅっと、肩に残せる
別れにできた、と言ってもいいのだろうか…。
終始、流れるラフマニノフ・「ピアノ協奏曲第2番」の
うねるような調べに乗せて
“逢びき”のときめきと、後ろめたい苦悩をも見せていたが、
“別れ際”の妙が、特に、興味を引いた作品だった。
“別れ際”…。
私には、バタン!
という車のドアの音が、今でも、後悔に重なって
ぶっきら棒に聞こえる…。
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