天才作曲家モーツァルトの、4歳年上の姉・ナンネルが14,5歳の頃のこと。
一家は演奏旅行の途中、修道院に立ち寄る。
その離れに住んでいた、フランス王女ルイーズとナンネルは親しくなる。
兄・王太子に仕える青年への恋文を、ルイーズから託されたナンネルは
ヴェルサイユ宮殿に上がり、その彼と王太子に逢った……。~~~~
才能を育てることが許されなかった時代に生きた女性は
どんなだっただろう……というフィクションらしいですが、1つ1つのエピソードは
現代でも身に覚えのある人には、何かしらの思い入れを感じてしまうのではないかと
思います。私も、思うところありました。(内容にふれます。)
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①ルイーズのこと修道院で暮らす王女もまた、自由に生きられなかった女性の1人です。
(どの身分の人も、制約はあったのでしょう)
王女とナンネルとの関わりは、シーンの変化だけでなく
明るさと救いを感じられて、良かったと思います。
それは、友情を育めたという喜びだけでなく(いい友達☆というのは、それだけで人生に張り合いをくれますよね)後半、神に救いを求める生き方を選んだ、ルイーズの言葉にもあります。
その言葉を聞いたときのナンネルの状況は、絶望の淵だったはずなんです……。
あのような状況は、現代にもあります。それでも、生きていかないといけません……
そんなとき、支えになってくれる親友の言葉は嬉しいです。
②ナンネルの才能ナンネルは、演奏旅行にはかかせない人員なのに、クラヴィーアの演奏以外は許されない。
女だから、作曲はダメ。バイオリンもダメ。
かといって、音楽の練習ざんまいだったから、料理は得意ではない。
自分の将来は、どうなるの?という不安もありましょう……
娘の才能を伸ばそうとしない父親に、腹が立ちますが、ふと親の言葉を思い出しました。
「才能が身を滅ぼすこともある」
才能に期待するあまり、それに没頭したのはいいけれど、開花しきれるほど世間は甘くなく
結局、中途半端。かといって、自分の才能へのプライドは捨てきれず、つぶしが利かないまま、不遇に終わるという人は少なからずいると。
ナンネルの父も、女性蔑視ということでなく、娘を想ってのことかもしれないな~
とも思います。
③ナンネルと王太子ナンネルは、自分の音楽に興味と理解を示してくれた王太子に依頼されて、作曲します。
そして、その演奏を聴き、自分も演奏します。
そのシーンは、とてもよかった………
演奏時間には限りがあります。哀しいことに……
けれど、このメロディーの五線譜が、王太子であるのなら
そこに並んだ、音符の1つ1つが、ナンネル自身なのかもしれないな~と思えてきました。
演奏しているこの時間は、すぐに消えてしまうけれど、この音のなかで
五線譜と音符は、一心同体。
何者にもじゃまされずに、時間と空間を、ともにできる。
この先、どんなことがあっても、この時間を、誰も否定することは出来ないし
この音楽を、誰も、消すことはできない。
確かさだけを享受できた、と言っても過言ではない…
その後のナンネルのことを思えば、本当に、キラキラと輝いた演奏、美しい時間でした……
④密室で何が!?ナンネルが旅立つ前に、王太子と2人だけになりました。
突如、響く王太子の罵声。追い出されるナンネル……。一体、そこで、何が?
解説などでは、このロマンスも音楽も王太子には気まぐれだったらしいですが、
それでは、ナンネルが可哀想すぎます……
王太子をかばうようかもしれませんが
残酷な恋の結末は、それだけ、王太子にも深い愛の痛みだったとも言えなくはありません。
王太子は、音楽の才能を通して、彼女に敬愛と思慕の情を持っていたと思います。
けれど、立場上、ナンネルと結ばれることはできない。
最後の再会には、“死”を意識した演出もしていた……。
王太子は、どうすることも出来ない二人の関係を、美しく終わらせられるほど冷静になれなかったのではないかと思います。別れが辛ければ辛いほど、悲しみよりももっと強い負の感情(たとえば憎しみ)が、沸き起こってくることは否めません。
そして、感情が暴発して、愛する対象まで傷つけてしまう………
むしろ、特別な感情が無いほうが、人には優しくなれそう……?
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ナンネルが、火にくべるのは、王太子のために作曲し、演奏した楽譜。
あんな別れ方をした人との楽譜なんて、残したくない……
ナンネルが作曲家として、後世に残らなかった理由の1つとして
切ない結末を見ましたが、たとえば
愛していたのにあんな別れ方をした人とのメールを消すようなもの、であるなら
同類あい憐れむで、馬車に揺れるナンネルの瞳に、
虚ろな自分が、重なってみえるかもしれません……
ちなみに、ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼル。
フェリックス・メンデルスゾーンの姉です。
有名な弟の陰に、彼女も隠れてしまいがちですが、楽譜が遺されているのが幸いです。
そうすると、ナンネルの本当の曲も(劇中は創作だから)、聞いてみたくなりますね。

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