
作品についてhttp://cinema.pia.co.jp/title/25392/↑あらすじ・クレジットはこちらを参照してください。
(結末には触れていません)
1947年作 ジェラール・フィリップ主演
あらすじです。http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD16250/story.html
第一次大戦中。
15歳のフランソワは、校内の病院に働きに来た年上の女性マルトに惹かれた。
しかし、彼女には出征中の婚約者がいた……。
今、出逢ってはいけない男女が出逢ってしまったとき、
その出逢いを続けるか、終わらせるか、のターニングポイントがあるように思う。
出逢って間もなくの頃、彼らは、夜の桟橋で逢う約束をする。
彼は1時間も遅れたのに、彼女は待っていた。
そのとき、彼の父は言う。
「彼女が約束どおり来たのを見届けたら、逢わずに帰れ。」
その場に彼女が来なければ、未練が残るものでも
彼女が来ていれば、自分が愛されていることがわかり、
納得して、別れられると。
彼は、彼女が待ち続けていたことを見届けると、逢わずに
その場を去ってしまう。
後に再会したとき、
「僕は、桟橋に行かなかった。」
まるで彼女を試すように言った彼に、彼女は、こう返した。
「よかった。私も、桟橋には行かなかったわ。」
言い寄る彼に、桟橋で待っていてと言ったのは彼女だった。
実際は、彼女がずっと待っていたことを知っている彼は、
この彼女の返答を、どう受け止めただろう。
行かなかった彼の気の咎めを、軽くするくらいのことはできただろう。
しかし、真意は、ほかにもあったはずだ。
再会を機に、より親密になる二人。
一方、彼女は結婚し、夫は戦地に行っていた。
好きという気持ちだけでは、現実は、二人を許してはくれない。
今となっては、本当に“そのとき”が、二人の運命を、
いい方向に変えてくれたかどうかは、知る由もないが、
もう、戻れなくなってから、彼女は、立ち止まるように、
彼に言った。
「あのとき、あなたが桟橋に来てくれたら、私は、あなたを選んでいた。」
この言葉を、彼はどう受け止めただろう。
いや、どう受け止めなければならなかっただろう。
以前に、彼女は、桟橋には行かなかった、と言ったのだから。
桟橋に行かなかった、と彼女が言った時は
彼には、思いやりの嘘で済んだだろう。
しかし、来なかったから、あなたを選ばなかった、と言った彼女は、
選んでいないはずの彼と、ズルズルと地獄に落ちる覚悟を選んでしまった。
けれど、彼は、肉体に引きずられた行動をとることしかできない子供だった。
(20歳を過ぎていたジェラール・フィリップが、頼りなくも、初々しい)
悪魔は、彼の若い肉体に宿っていたというよりも
未熟な精神にこそ宿っていたのかもしれない。
ラディゲ17歳のこの作品は、彼の体験も含んでいるという。
どこまでがマルトで、どこまでが彼と関係のあった女性かはわからないが、
若い彼が、どこまで年上の女性心理に迫って描いていたのか、ということに
興味を覚えた。
この男女を総括して描写したラディゲ自身は、
フランソワよりも、ずっと大人だったと思う。
年齢を重ねて、さらに重厚な人間物語を描いてほしかった。
20歳で他界してしまったことが惜しまれる。
テーマ : 洋画
ジャンル : 映画