作品についてhttp://cinema.pia.co.jp/title/2891/
↑あらすじ・配役はこちらを参照ください。
原作:水上勉 (映画は変更部分あり)
洞爺丸海難事故を、基にしています。(作品では昭和22年)
事故での身元不明の2遺体、もう一人の男の存在、前後する放火殺人事件……
そして、男と女が出逢い、10年後に起こった新たな事件と、その後……
戦後間もない日本で、むさぼるように生き、かつ
人として、幸せに、良く生きようとしていた人々――
けれど、台風に煽られるように、人の運命は弄ばれてしまう……
・樽見(犬飼):三國連太郎 ~復員後、わけありの大金を手にし、行きずりの八重に分ける。
・八重:左幸子~犬飼からの金で娼妓を抜け上京するが、再び、娼妓にならざる得なくなる。
・弓坂刑事:伴淳三郎~海難事故に紛れた放火殺人犯を追う。八重にも聞き込みする。
・味村刑事:高倉健~事故から10年後、舞鶴沖での心中事件に見せかけた殺人事件を担当する。
10年越しの殺人事件の真相解明に、興味をもたせつつ
生きるということの生なましい強さに、惹かれます。
(現代は、なんだかんだ言っても、ヌルイかも……)
劇中「貧乏人の逃げ道はそこしかない」という、刑事のセリフがありました。
それは、捜査推理上の、突き放した言葉ではなく
不可抗力への同情さえ、思わせるものでした。
貧乏とは、善悪の手前にあるもの――のような。
貧乏を飛び越えようと着地した先が、善悪のどちらになるのかは
自分では決められなかった、かのようなですね…………
この作品の面白い所は、真相に迫りながらも、それがゴールではないこと。(汗)
頼みは、自白のみ。真相は当時者しか知らない。
けれど、その曖昧さに、モヤモヤするどころか(映像の演出も独特☆)
スパッと割り切れないところに、人間の複雑さを見るようで、余韻が深いのです。
▼~▼ 内容にふれて(!)雑感です。
▼▼▼
1.爪☆ ←映画版のツボ☆
訳アリの大金を手にした犬飼が、八重という娼妓(宿場女郎?)と出逢い
一夜を共にしたとき、八重が、犬飼の爪を切ってあげる。
翌朝、大金を八重に分けた犬飼は、行方知らずとなりますが
八重は、切った爪を、感謝と思慕の印とするように、ずっと持ち続けました。
時々、その爪を取りだしては、話しかけたり、首筋を這わせたり(!)する八重。
心の中の見えない想い出よりも、爪であっても形あるほうが、
愛する対象の存在を、確かめることが出来て、嬉しい☆
マニアックですが(汗)、思う人の爪でさえ愛おしい八重が、可愛い。
その爪が、あとで、なりゆきを“引っ掻く“ことになります。
2.善人でいたい
性善説になりますが、人は、基本、良くありたいと思うモノだと思うのです。
犬飼が、その後、樽見と言う名の篤志家として、
あちこちに寄付していることを知ります。
過去の罪滅ぼし?と思われますが、罪がなくても
自分に福があれば、おすそ分けしたいと思うのも、人情ですよね。
(売名だけの人もいるか…?(>_<))
過去に何があっても、未来は善人として生きて行こう!――
それは、良いことだと思います。けれど
もし、過去を知る人が現れて、化けの皮が剥がれれば、善人ではいられなくなる……?
善人の自分は、罪など犯すはずはないか?いや
“善人”で居続けたいがために、悪に手を染めるという矛盾を、人間は犯すのか……(>_<)
要反転↓10年ぶりに、ただ感謝を言いたくて、樽見=犬飼を訪ねた八重。
けれど、“過去“に呼び戻されたとき、樽見は、過去と八重を葬ってしまった!
良き自分を守るために……と言っていこう……
「アンタ、イイ人だね、私にはわかる」
初対面で、八重は、犬飼にそう言っていたのに……orz3.北海道への船で(ネタバレです!)要反転↓
10年前の遺体の件は、曖昧なまま
八重(と目撃した書生)殺しの罪は、確定的な樽見は
原点に返るが如く、北海道行きを希望する。
連絡船から、八重への弔いの献花を、
弓坂刑事に続いて、投じるはずの樽見だったが、
あっと言う間に、海に身を投げてしまった!!!!
もう逃げられない――というより、犬飼は
その海に、“すべて“を沈めたかったのか…………
波のざわめきが、心を乱すのは、
突発的な樽見の行動の衝撃だけではない……
▼▼▼
もし、北海道で、アノ男たち2人と、出逢っていなかったら
犯罪に、巻き込まれていなかったかもしれないけれど
大金を手にして、成功し、篤志家になることも、なかったかもしれない――
もし、青森に、渡っていなかったら
八重に、握り飯をもらうこともなかっただろうし
“爪“を切ってもらうことも、なかったかもしれない――
“愛憎渦巻くという飢餓海峡“
もし~~たら~~れば~~
原点の北海道に戻る手前で、文字通り、すべてを“無”に帰してしまった男を見ると
生きるとは――生き抜くとは――
いったいどんな意味があるのか……と思ってしまう。
しかし
非情に進む船が残す波動が、“無”ではなく、“道”を残すようなラストシーンには
愛憎を抱き合わせながら、人が生きていくことの重みを、感じずにはいられない………
↑完全版は3時間超ですが、引き込まれました。
手応えある名作です。
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ジャンル : 映画

作品について
http://cinema.pia.co.jp/title/165302/↑あらすじ・配役はこちらを参照ください。
チリ。1988年。
ピノチェト独裁軍事政権の継続の是非を問う、国民投票が行われることになった。
賛成派・反対派ともに、1日15分のテレビ放送で
国民の支持を得ようとする。
広告会社のレネは、友人から、反対派のテレビ放送の“助言”を頼まれる……
大好きなガエル・ガルシア・ベルナル主演です。
社会・政治色っぽい問題提示を匂わせつつ
仕事としてだけでなく、自分の意志を込めながら
いかに、人の心に響く広告を作るか――
コミカルな部分もあり
社会情勢上の、命がけのピリピリ感もあり(>_<)
引き寄せられる作品でした。
▼~▼ 内容にふれて雑感です。
▼▼▼
1.独裁政権下での投票
ベトナムの記事でも、触れましたが
一党支配の国では、選挙で、体制は変わりません……
独裁政権では、独裁なんですから、民主的に――ということは
ありえないと思われます。
けれど、国際世論の手前、“形だけでも“国民投票して
独裁政権が勝利したら、民意ということで、基盤は強固になります。
ピノチェト大統領は、圧勝の前提で、投票を許可します。
と言うのは、国民は
YESかNOではなくて、YESか棄権する、と思っているから。
NOなんて投票したのがバレたら、酷い目に遭うかもしれないことを
従来からの残虐行為で、経験済みだから…….
それと、今のところ、平穏に暮らせている人は
変革を恐れることもあって、とりあえずYESと言う人もいます。
しかし、変革を望む人には、一大チャンス!
投票で、独裁政権を終わらせることができるなら
無血開城ではないですか(*^_^*)
2.広告の製作
レネは、定評のある広告マン。
ガエルの、真摯で魅力的な風情が、ピッタリ☆
広告は、売りたいものの特性を簡潔に知らせつつ
インパクトがないといけません。
レネは、政治とはいえ、公約や主張よりも
インパクト重視路線で押します。
なるほどねェ~
反対派リーダーの政策演説は、一番重要なことかもしれませんが
それでは、つまらなくて、見てくれないと……
見てくれなければ、始まらないと……
確かにねェ~
ふと、思うのですが,……
この一世一代の投票~今後あるかどうかわからない~は
まず、インパクトありきなんでしょうが……
(政策・主張こそ大事なんですよね…)
広告制作にあたり、当然なのですが
コンセプトがあるというのが、あらためて、新鮮なことでした(当然なのに)
例えば、NOのデザインに虹を使いますが
ただ見た目にキレイだから、というのでは、納得されない。
反対派の集合体として、各団体の特色を色に重ねて云々……と説明する。
こじつけ?と思ってしまいそうですが(汗)
短いシーンでも、意味やコンセプトがあって、組み立てられているんだ……
ゴメンナサイ、私、そこまで考えて、CM等、見てなかったです(>_<)
コンセプト――気をつけてみます。
3.主張と危険(>_<)
広告マンとしてのレネだけでなく、
家庭人としてのレネがありました。
そうすることで、一般人の目線も、感じられます
レネの妻は、活動家で、逮捕もされています。
諸事情で別居中ですが、息子の母としてだけでなく、レネの想いはあるようです。
そして、レネも、仕事としての“助言“を越えて
NOのCMに、積極的に、関与していきました。
(上司は、YES派のCMに関係しているのに(>_<))
けれど、出来レースのつもりだったYES派が
NOのCMが好調なのをよく思わず、レネにも、圧力をかけてきます。
特に、子供に危険が迫っては大変(>_<)
現政権下では、政府がらみで、行方不明者が何人もいると言う事実。
インパクトある明るい未来志向のCMでも、
現政権の闇の部分を見せ、現実の危機を、視聴者に印象付けることも忘れない。
▼▼▼
かくして、NOが勝利したことは、言ってもいいですよね。(*^_^*)
一般ピープルには、わかりやすさが大事、と言う一面は、よくわかりました。
いくら、正しいこと重要なことでも、小難しいと、曲解されることもある……(汗)
要点だけ、ズバッと言って、詳細はあとからついて来て~(^_-)-☆
よく、“未来志向ですから”と言っていたレネ。
ガエルの笑顔そのままに、明るくてイイ☆
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作品について
http://cinema.pia.co.jp/title/113746/↑あらすじ・配役はこちらを参照ください。
・父 マーヴィン :20年位寝たきり
・姉ベッシ―(=ダイアン・K) :父の介護中、独身 白血病
・妹リー(=メリル・S) 美容師の資格取得中、実家とはご無沙汰、夫を追い出す
・リーの長男ハンク(レオナルド・D) 別れた父を慕い、母に反抗的、自宅に放火
・姉妹の叔母:腰が悪いが動ける、TVドラマ好き原題は『Marvin’s room』 ←おじいちゃんの部屋
2トップの姉妹の配役も魅力ですが
レオナルド・ディカプリオのナイーブな青年像も、まぶしいです。
(レオの評価の高さから、鑑賞したいと思っていました)
介護・病気・親子、そして姉妹――
1つ1つ、重いテーマを含みますが、全体のトーンが暗くなく
今、光を感じながら、しっかりと生きている強さに、励まされます。
それぞれの個性と主張の強さが、それぞれの立場にある人の気持ちを
代弁してくれているようです。
そういうぶつかり合いが、現実には、きびしいかもしれないので
本音をぶつけながら、家族の絆の糸を、手繰り寄せるような姿に
大切さを感じます。
きっかけは、姉が白血病になったこと。
骨髄移植のドナーを捜すために、長年、ご無沙汰だった妹に連絡し
妹は、息子2人を連れて、実家に帰省します。
その前に、別れた父を慕う、妹の長男は、母への反発から、実家に放火
施設入所しますが、ドナー検査のために、外出許可を得ますが
ドナー検査を受ける気はないと言います……
姉の病気が治るかどうか――が気になるところですが
ゴールは、そこではないのが、ミソであります。
▼~▼ 内容にふれて(結末含む)雑感です。
▼▼▼
1.介護のこと
介護は、誰が、どう看るのか最善なのか――
それに答えはありません。
姉は、父を思うあまり、あるいは、ほかに方法がなかったから(?)
ひとりで、(独身で)、寝たきりの父を看てきました。
結婚して、遠方に住む妹との疎遠は
自分のことより、父の介護を優先してきた姉と
施設にお任せしたい妹との、考え方の差異でもあるよう。
姉は姉で、割り切れない想いがあって、父を、介護してきた。
自分の人生を進めてきた妹には、羨む気持ちが無いと言ってはウソになるかと…
でも、姉=ダイアン・キートンは、優しい雰囲気で
父への愛にあふれているし、妹とその子にも、優しい目を向ける。
それは、ドナーになってくれるかも…などという打算ではないと思えます。
2.妹であり母であるリー
シングルマザーのリーは、資格取得に燃えているし、
アグレッシブに生きている印象です。
というか、当たりが強い(>_<)
息子にも、ガミガミ・イライラした雰囲気になっているので
長男が、反発するのも、ムリはないか……
でも、言い訳しますと(汗)
それだけ、リーは、生きることに必死なんですよ。
仕事もして、家事・育児も、要領よくこなす――
しかも、それが、毎日毎日……
訳あって、夫を追い出すことになったリーは
男親の分まで、やっていかないといけない。
時間にも心にも、余裕が無い時には、待っていられなくて
ギスギスしてしまうんです……(ゴメンネ)
3、妹の長男ハンク
ディカプリオは、感じやすさが、ナイフのような危うさになった青年が
絶妙に、魅力的だと思います。
孤独が怒りに変わり、怒りは、硬いのにもろい哀しみになって
ポロポロと崩れていくような心情が、映し出されるようなんです。
そこにいない父への思慕と、そこにいる母への憎悪――
おそらく、本当に欲しいのは、母からの優しい愛情かな…
お母さん、キツイですもん…
現実がそうだと、非現実なところに、憧憬の目を向けて、代償しようとしますもんね…
けれど、母が父を追い出したのは
息子(自分)を危険にさらしたからだと、知る。
ファンタジーが崩れたとき、うまく、現実を受け入れられるかどうかが、ネックか…
母への想いも、重なるのか
優しくしてくれる伯母に、なつくハンク。
なのに、母へのあてつけか、ドナー検査は受けないという……
しかし、姉の生きるチャンスを奪うな!と諭す母。
ハンクが思う以上に、母は、身内(自分含む)を思っていることに気づいたかな…
そして、医師の勧めもあり、ドナー検査を受けるハンク。
ドナー検査を受けるということで、まず
家族が同じ方向を向いたような、まとまりを感じさせます。
4.おじいちゃんの部屋で(ネタバレです)
↓要反転
しかし、ドナー適合者はなく、姉への骨髄提供は無しに。
治癒の可能性が、低くなってしまうのは、残念なのですが……
“おじいちゃんの部屋”(原題)に、皆が、集まって
おじいちゃんの好きな、鏡の反射で、光を作りました。
この光が、この家族の光なのでしょう。
家族を愛する喜びの光――
支え合う愛情があれば、明日は悪い日ではない(きっと!)――
機嫌よさそうなおじいちゃんの表情は
この家族たちの(姉の病気含む)行く末が、悪くないことも、予感させます。
▼▼▼
介護も、結婚も、親子関係も、仕事も……etc.
人生には、期待どおりに行かないことが多いです……orz
多分、ほかの作品では、すごく暗い流れにもできそうな出来事です。
けれど、この作品は、重暗くならないのが、とてもイイです。
特に、姉妹の叔母さんが、いいポジションでした。
彼女は、腰が悪く、そのエピソードも壮絶なんですが(汗)
キャラがイイ☆
父の介護の手伝いをしているようで、TVドラマに観入っちゃって^^;
ドラマのことで、頭がいっぱいなところが
ナンチャッテムードを醸し出しているので、ところどころ、和むんです(*^_^*)
深刻な問題とは、真面目に向き合うとしても
ドンヨリすることはありません!
深刻な問題だからこそ、ナンチャッテムードも必要だと思っています。
(不謹慎ではなくですよ)
おじいちゃんの部屋に、皆が集まる――
シンプルな終わり方ですが
温かい気持ちになりましたよ。
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