映画『一枚のハガキ』★小手先のことではリセットできないから~雑感です。
公式サイトです。http://www.ichimai-no-hagaki.jp/
99歳の新藤兼人監督の体験に基づいた作品だそうです。
戦争中、召集された100名中、生き残った6名のうちの一人だったそうです。
生き残った啓太は、妻・友子に渡してほしいと
戦友から1枚のハガキを預かり、友子に逢いに行った……
と言うことですが、前半は、大竹しのぶさん演じる友子が、
どんな生活を強いられてきたかを、生生しく見せられます。
友子は、夫が戦死したあと、義弟と再婚させられます。
昔は、家をつぐためによくあったことのようで
“なおる”と言うのだと、母が言っていたことがあります。
そして、延々と、選択肢がない友子の生活が、映されます。
選択肢と言いましたが、人生は選択の繰り返しだとも言いますが、作品は、冒頭で
兵士の運命がクジで決まるという、何とも、
文句をつけたくてもつけられない有様も見せます。
選択の余地すらない、クジの当たり外れの“運”だのみ。
生き残った、運の良かった啓太(豊川悦司)であっても、
信じがたい現実が待っていました。
そんな中、ただ、”今”を生きるしかない友子に逢いました。
反戦映画と言えば、反戦映画です。
戦争を経験して生き残った人たちが抱く思いは、戦争憎し!に決まっているからで
あえて、戦争反対!の反戦映画です、というまでもありません。
むしろ、反戦映画です、と言ってしまうと、観念的になってしまいそうです。
あの、友子=大竹しのぶさんの、やるせない怒りと悲しみと、虚無感……
その、スクリーンの枠をはみ出している狂おしい演技は、“反戦”という2文字では足りません><
そして、すでにネタバレのように、ポスターにあるのは
“皆の分まで生きていこう”の文字と、2人が麦畑で手をとりあう姿……
啓太と友子は、ともに生きよう、として、スムーズな旅立ちがあるはずでした。
しかし、それでは、普通ですよね……だから….?
ドラッグしてください。
前に進もう!辛いことは忘れよう!と言いますが、
そんなに簡単に、前には進めないものです。
現状維持がやっと。友子の亡夫2人も、白木の箱のまま、
その家に友子と“暮らして”きたのです。
だから、今や、啓太と生きていくからといって、
白木の箱を、火にくべて終わりにできるものでもない。
夫の箱が燃える様子を見て、友子が正気を失うのは、もどかしくも、同意できます。
けれど、もし、リセットするなら、小奇麗な小手先のことだけでは、
新たな生き直しは、できないのかもしれません。
みるみる、火は燃え広がり、友子が最後の住人となった婚家は、全焼しますが
むしろ、火が清めたかのような清々しさなどと言っては不謹慎でしょうか。
生き残った人は、確かに“運”がいいでしょう。亡くなった方の分まで、
強く生きる義務もあるかもしれません、生きてるだけで丸儲けと。
でも、生き抜いていく、というのも、大変ですよね、実際…….。楽じゃない。
自分だけが生き残ったら、哀しみに暮れてしまうこともある。
何もかも忘れて、と言われても、忘れられるもんじゃないのです。
それでも、前に進まないと、という強迫観念にさいなまれる。
友子のように、お酒のらっぱ呑みでもしないと、ふっきれませんよ(T_T)……
だから、あの火災は、展開的にも映像的にも、とても意味のあるものだったと思います。
いい意味で、ゼロにしてくれたと思います。
そして、ラストシーンは、黄金色の麦畑が、画面いっぱいになって
2人が小さかった(笑)。アップにしなくて良かった。
麦畑の広さが、十分、確かな幸せを見せていたから☆
私が思うのは、クジに当たらなくても仕方ないけど
大ハズレしないといいな、という都合のいいこと☆^^;

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