映画『Life 天国で君に逢えたら』★彼は、残された命の時間の風に乗った...

作品について http://cinema.pia.co.jp/title/18497/
↑あらすじ・クレジットはこちらを参照してください。
(ネタバレ)
「いい風吹いてるよ。」
夏樹の遺灰が、海風に乗る。
プロウインドサーファー飯島夏樹さんの散骨シーンで始まる。
妻・寛子と子供たちは、笑顔で空を見上げた........。
ストーリーは、すでにチラシにあるとおり、
若くしてガンに冒された男性と、家族の物語だが
描かれていたのは、
”家族愛の物語”だとか”勇気と感動の物語”などと言う言葉では、
要約できない”人の姿”だった。
結末を冒頭で見せ、娘に語らせるという回想のスタイルは
その後に見せる娘との関係から、
より深い家族の絆を暗示させていた。
(そして、見せ方のうまさは、ラストにもあった。)
風に乗るという、ウインドサーフィンレースのシーンは、
遠景・近景巧みに、迫力ある臨場感だ。
これは、彼の栄光あるシーンとしての見どころだが、
同時に、暗転したその後の彼とのコントラストにもなっていた。
ガンを発症してからの彼と家族の姿は、
人ごとではない。
3人に一人がガンで亡くなるという今、
余命が限られるということが、誰にでも起こり得る。
精神的に追い込まれる夏樹。
不安が募る家族。
そんな夏樹を変えたのは、奇しくも、彼の師匠・藤堂の死だった。
藤堂は、自分のことよりも、先に病気になった夏樹の身を案じながら、逝ったのだ。
そうこうして、夏樹は、今まで海風に乗っていたように、
残された、命の時間の風に乗った...........。
時間を惜しむように、ホームページで
手紙やメールへの応援に応える夏樹。
自分は、一人ではない。
家族や友人、支えてくれている人がいる。
自分は、皆に生かされている。
それを教えてくれたガンに、感謝さえしている夏樹に、
胸が熱くなった。
妻・寛子が、結婚した頃のことを娘に語るシーンにも目頭が熱くなったが、
極めつけは、
夏樹が、寛子あてに書いた手紙だ。
”Dear寛子様”で始まる手紙を、夏樹=大沢が朗読する。
彼の人生すべての想いを、妻に託したその手紙を
どうか、聴いて欲しい。
そして、その手紙を妻が目にしたとき、彼はもう息を引き取っていたのだ...........。
人は、必ず死を迎える。
しかし、どんな状況でも、死の直前まで、
人は、何らかの希望を持てる可能性があると、私は信じてきた。
最後の誕生日。
夏樹は、家族・友人の見守る中、最後の海風に乗った。
その姿は、私にも希望をくれた、いいシーンだったと思う。
そして、ラストシーンが、私は好きだ。
夏樹と寛子が、浜辺で始めて出逢うシーン。
「この手を放さないよ。」
それが二人の始まり。
それが、苦労の始まりで、幸せの始まり。
そして、永遠に終わらない家族の絆の始まりを、見せているようだからだ。
エンドロールの写真も、
桑田さんの歌も、いつまでも感じていたい余韻を感じさせてくれた。
私のこのような要約では感じられない、彼の生き様をどうか見てほしい。
作品の構成や展開も、さることながら、
人の生き様からは、きっと何かしら、
得るものがあるはずだから....。

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