映画『明日への遺言』★彼は「本望である」と言った。

作品について http://cinema.pia.co.jp/title/19325/
↑あらすじ・クレジットはこちらを参照ください。
以下ヤフーレビューの転記です。(ネタバレです)
ピカソ作『ゲルニカ』
一般市民への無差別攻撃を象徴するように、
冒頭に、この絵が掲げられます。
続く、各国の記録映像が、無差別攻撃の惨禍を伝えました。
名古屋への無差別攻撃を行った、米軍兵士を捕らえた岡田中将は、
略式裁判で処刑した罪を、戦勝国アメリカに問われ、
部下19名とともに、横浜の法廷に立たされました。
大岡昇平・著『ながい旅』の映画化となった本作は、
約2時間の上映時間のほとんどが法廷を舞台とし、
尋問と答弁が繰り返されますが、
裁判を、法による戦い=”法戦”と呼んだ、
彼の信念が随所に見て取れるものでした。
・軍事施設のない場所での一般市民への無差別攻撃は、国際法違反であること
◎国際法を違反した兵士を”処罰”したことは、戦犯には当たらないこと
◎米軍の上陸が予想された状況下では、略式裁判の処刑もやむを得なかったこと
・空襲した米兵の処刑は、“報復”ではなく“処罰”であること
・敗戦国に、すべての罪を負わせることへの批判
・すべての責任は、上官である自分にあるという姿勢etc.
(◎は、大岡氏が、この裁判のポイントとして、挙げておられますが、
減刑を念頭にした温情的質問にも、あくまでも”処罰”にこだわっています。)
軍人・上官・日本人としての彼の毅然とした姿だけでなく、
言葉は交わせずとも、夫・父としての彼の姿にも、胸打たれます。
のみならず、裁判官の好意・温情をも芽生えさせる事実があったことに、
彼の人柄が、しのばれました。
風呂場で、部下が合唱する「ふるさと」を聞くシーンは、
岡田中将が、自分が盾となり、全員、生きて“ふるさと”へ帰すのだ
と、法戦を戦い抜かんとする、あらたな決意をうかがわせる
印象的なシーンでした。
自ブログからの引用で、恐縮ですが、
南方のラバウル航空隊にいた方の話です。
爆弾を積んで飛行したのか、という若者の問いに対し、
「戦争だもの。良いも悪いもない。
俺だって、アメリカに撃たれた。」
と、傷跡の残る、挙がらなくなった肩を見せました。
そして、彼が絶句したのは、
私も含め、その時まで、
ラバウル航空隊で命を散らした人がいたことを知らなかった、と言うことでした。
「ラバウルを知らんのか……。」と。
大東亜戦争が、年表にある歴史の1事実でしかなくなりつつある今、
1つでも、“とある事実”について知る、
それだけでも価値のある、先人への敬意なのではないかと思います。
米サンタバーバラ国際映画祭での上映において、
エンドロール後の拍手が、鳴り止まなかったと聞きます。
好意的な反響は、誇りと信念を持った一人の男を、
淡々と見せることで感じる、真の反戦メッセージに、
共感したものかもしれません。
「本望である。」
絞首刑判決を受けた岡田中将が、法廷で、唯一、妻に向けた言葉に
あらためて、
彼が命を賭けて、遺そうとしたものの意味を
問いながら、鑑賞して頂きたいと思いました。
それだけの価値のある作品だと思います。
PS:岡田中将が、振り返って、月を見上げたシーンに、
言葉がありません......。
~~~
軍事裁判にかけられ、戦犯と呼ばれた方々。
「勝てば官軍負ければ賊軍」などと言いますが
それでいいとは思えません。
彼らの遺言として観るべき作品と思い、鑑賞しました。

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