映画『少年は残酷な弓を射る』★ラストの抱擁に溢れる愛with子育ては大変(>_<)~かなり雑感です。

作品についてhttp://cinema.pia.co.jp/title/156970/
↑あらすじ・クレジットはこちらを参照ください。
異常なほど 母になつかない少年・ケヴィンについて話そう…という原題です。
子育ては、難しい。母親にとって、特に、男の子は。
何かあれば親の育て方が悪い、と言うのは簡単ですが
厳しくしたり、優しくしたり、なんとかバランスを取っているつもりでも
反抗期になると、力もあるし、カミソリのようにギラギラして怖い、と思うこともありました。
可愛い息子との関係は、私にも、ホンワカムードばかりではありませんでした。
ですから、この作品のケヴィンと母親との関係を、観ておきたかったのです。
まずは、ケヴィン役の少年=エズラ・ミラー。
映画『ベニスに死す』のビョルン・アンドレセンを思い出させる美少年です。
ナイフのように、研ぎ澄まされた危うさが、作品に、冷たく光ります。
そして、母親役のティルダ・スウィントン。
彼女は、ドンと肝のすわった、肝っ玉母さんタイプではありませんね。
『ミラノ、愛に生きる』が、記憶に新しいのですが、妻として母としてなどの“抑圧”を
頭痛薬で抑えている、という風情がよく合っています。
彼女の、ピリピリする不安と困惑&薄倖感が、ずっと画面を覆います。
作品には、主に2つの“なぜ?”を、感じました。
(以下、内容にふれて雑感です)
▼▼▼
・1つは、なぜ、ケヴィンは、母を困らせたのか?
・もう1つは、なぜ、ケヴィンは事件を起こしたのか?そしてその前に
なぜ、父と妹を殺したのか?
子供(赤ちゃんも)は、母親の心理状態を映すと言われます。
ママが不安でいたら、赤ちゃんにも伝わってしまって、不安になる。
赤ちゃんは態度で感じ取るしかないから、敏感なんですね。
ママは、初めての赤ちゃんであるケヴィンに対して、ネガティブな印象でした。
赤ちゃんは、コレを済ませば終わりという、やっつけ仕事ではないから、完璧やゴールが無いようなもの。
ママが、不安と焦燥にまみれてしまうのも、よ~くわかるのですが……
ボール遊びをするときのママは、ケヴィンと楽しむことよりも
ケヴィンが、自分の言うことを聞くかどうかを試すためにやっているように 見受けられました。
それが、赤ちゃんのケヴィンには、バレているのですね。
(赤ちゃんケヴィンの怖い目つきは、名演か?)
オムツも。
なかなか、取れない子います。(息子も…)
ケヴィンは、子供心に、オムツ替えで、ママの手をかけさせることで、
愛情を感じていたと思います。
結果的には、“手のかかる子=困った子”となってしまうのですが
手のかかる子ほど可愛い、と言われることもあり
なんだかんだと手をかけることは、愛情が育まれることに、通じるものだと思います。
(ママを心から困らせようなんて、オーメンではないんだし、と思ってしまう)
けれど、ママはケヴィンを、“困らせる子=憎らしい子”と思ってしまう。
それも、よ~くわかります。子供は、天使だけでなく、無垢ゆえに残酷な面もあります。
でもでも、親が子供に対等にムキになってはダメなんだ、と自戒を込めて思います。
イライラしないで、子供に伝わるように、愛情を伝え続けること。
それしか、無いように思えます。
(……などと言ってますが、私も、試行錯誤でした。
どうしたらいいかわからなくて、幼稚園のベテランの先生にも相談したりしました。
子育ては、大変です。)
そして、なぜ、事件を起こしたか?
何、やってんだ!この子は!と、思いましたが、
事件直後、パトカーに乗ったケヴィンが、立ち尽くす母親に向けた眼差しに
あっと、思いました…………………….
そのときのケヴィンの眼差しが、優しく見えたのです。
ママを困らせてやったゾ!という意地悪な目つきではなく、
母親に甘えたそうな、澄んだ眼差しに、見えたのです。
さらに、ショッキングなことに
その事件の前に、ケヴィンは、父と妹をすでに殺していました。
父を演じたジョン・C・ライリーは、映画『大人のけんか』でも、
摩擦を和らげるクッションのような存在で、ケヴィンともうまくいっていて
ケヴィンに弓を教えたのも、父でした。
妹も、ケヴィンを慕っていましたが、実は、ケヴィンは妹が生まれたとき
上の子に、よくみられがちな嫉妬を、していました。
もし、ケヴィンが、母親を憎むだけだったら、母親を、真っ先に殺していたのかもしれません。
あるいは、何もかもメチャクチャにして、母親が困惑するのを観たかったのか、とも思いましたが
それは、
パトカーでのケヴィンの瞳の優しさで、否定しました。
ケヴィンは、赤ちゃんのときから、ずっと満たされなかった想い、つまり
母親が、心から(義務感でなく)自分を愛すること、自分だけに関心を持ってくれることを
弓を手にしたことで、誤った方向に自分を向かせてしまったのではないか……
可愛さあまって憎さ百倍。
とてもとても、愛するからこそ、それが足りないと、憎しみになってしまう。
親しい家族だから、甘えが度を越してしまう。
そして、1度、愛から憎しみへ解放されるように、父と妹へ放たれた矢は
もう、わけがわからないまま、暴発するように、
事件の矢へと、発展してしまったのではないか……
もう、そこまで行かないと、ケヴィンの渇愛を、止めることも出来なかったのではないか……
事件から2年経ったとき、刑務所のケヴィンに、母親が尋ねる。
なぜ?と。
ケヴィンは、答える。
「わかってたつもりだった。でも、今はわからない。」
なんとも意味深です。^^;
わかったようなわからないような、青年の迷いは、まだあるよう。
でも、わからないということがわかった、ということは進歩でもあるよう。
次の瞬間、母親は、ケヴィンを抱きしめていました。
その表情は、今までで1番、優しい。
観たときよりも、今、そのシーンを思い出したら、胸が熱くなってきました。
余計なセリフがないから、想いが限定されない。
でも、私は、心で、勝手に、母親の声をつぶやきました。
「ケヴィン、ちゃんと愛せなくてごめんね。でも、ずっと、愛していたのよ。」
私自身、もし、時間が戻るなら、もっともっと、心に余裕をもって
子供と向き合えたら良かったと、思っています。
あの頃は、自分も若かったせいか、心に余裕がなくて
子供のことも、やっつけ仕事になっていたかもしれません。
寂しい想いをさせてたんだな、と思うこともあります。
時間は取り戻せなくても、この先も、愛情を注ぎ続けることはできる。
ラストの抱擁には、初めて、母親の愛があふれているのを感じました。
多分、この時ほど、母の愛情をケヴィンも感じたことはなかったのではないかと思います。
もっと、もっと、愛よ溢れ出て!!と思いました。
▼▼▼
作品に漂う、“なぜ?“の答えを、ラストの母親の抱擁が、教えてくれました。

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